
久しぶりに楽器を弾きたくなったとき、楽譜を開いて最初に戸惑いやすいのが音楽記号です。子供のころに習った記憶はあっても、細かな意味までは思い出せない方も多いのではないでしょうか。
音楽記号は、作曲家が思い描いた演奏に近づけるためのヒントです。記号の意味がわかると、楽譜に込められたメッセージを読み取りやすくなり、演奏にも自然と表情が生まれます。
この記事では、楽譜によく出る音楽記号を種類別に一覧で整理し、初心者にもわかりやすく解説します。
Contents
【音部記号・調号・拍子記号】基本となる音楽記号一覧①
楽譜を読むとき、まず目に入るのが音部記号・調号・拍子記号です。
これらは楽譜の全体像を決める役割を持ち、どの音域で、どんな調で、どんなリズムで演奏するかを示しています。
鍵盤楽器の楽譜は、基本的に上下2段の大譜表で書かれています。上段は右手、下段は左手のパートを表し、それぞれに音部記号が付いています。
この基本構造を理解すると、楽譜の見通しがぐっとよくなります。
音部記号
音部記号は、五線譜のどの位置がどの音なのかを示す記号です。鍵盤楽器の楽譜では、主に「ト音記号」と「ヘ音記号」の2つが使われます。
| 音部記号 | 主な音域 | 基準になる音 | 使われる場所 |
| ト音記号 | 高音域 | 第2線が「ソ(ト)」 | 楽譜の上段、右手のパート |
| ヘ音記号 | 低音域 | 第4線が「ファ(ヘ)」 | 楽譜の下段、左手のパート |
ト音記号は第2線が「ソ(ト)」、ヘ音記号は第4線が「ファ(ヘ)」であることを示しています。この基準になる音の位置を覚えておくと、音階を読むときの目印になります。
調号
調号は、音部記号のすぐ右隣にまとまって付いているシャープ(♯)やフラット(♭)のことです。その曲全体の調(キー)を決める役割があります。
調号で指定された音は、楽譜全体を通して半音上げたり下げたりして演奏します。代表的な例は次のとおりです。
- シャープが1つの場合:ト長調(G major)、またはホ短調(E minor)
- フラットが2つの場合:変ロ長調(B♭major)、またはト短調(G minor)
このように、シャープやフラットの数と位置によって調がわかります。
調号は、曲の雰囲気や響きに関わる要素のひとつであり、メロディ、和音、テンポ、リズムなどと組み合わさって、曲全体の印象を形づくります。
拍子記号
拍子記号は、音部記号の右隣に書かれた数字で、1小節にどれだけの長さの音符が入るかを示しています。上の数字は1小節の拍数、下の数字は1拍の基準となる音符の種類を表します。
代表的な拍子には、次のようなものがあります。
- 4分の4拍子:1小節に4分音符が4つ分入る拍子。ポピュラー音楽やクラシック音楽で広く使われ、楽譜では「C」という記号で省略されることもあります。この記号は「コモンタイム」と呼ばれています。
- 4分の3拍子:1小節に4分音符が3つ分入る拍子。ワルツでよく使われます。
- 4分の2拍子:1小節に4分音符が2つ分入る拍子。軽快なマーチで使われることが多い拍子です。
【音符・休符・付点】基本となる音楽記号一覧②
楽譜を読むうえで欠かせないのが、音符・休符・付点です。
これらは「どの音を」「どれくらいの長さで」「どこで休むか」を決める記号で、リズムやメロディの骨格を作ります。
音符
音符は、音の高さと長さを同時に表す記号です。ここでは、4分の4拍子を基準に説明します。全音符を基準にして、2分音符、4分音符、8分音符、16分音符と、半分ずつ短くなっていきます。
| 音符の種類 | 長さの目安 | 形の特徴 |
| 全音符 | 4拍 | 白い丸だけで書かれます。 |
| 2分音符 | 2拍 | 白い丸に棒が付きます。 |
| 4分音符 | 1拍 | 黒く塗りつぶされた丸に棒が付きます。 |
| 8分音符 | 2分の1拍 | 棒の先に旗が1つ付きます。 |
| 16分音符 | 4分の1拍 | 棒の先に旗が2つ付きます。 |
音符の長さは、拍子記号と組み合わせて読むことで、正確なリズムを把握できます。
臨時記号
臨時記号は、曲の途中で一時的に音の高さを変える記号です。代表的な臨時記号には、次のようなものがあります。
- シャープ(♯):半音高くする記号
- フラット(♭):半音低くする記号
- ナチュラル(♮):変化した音を元に戻す記号
臨時記号の効果は、その小節の中だけに有効です。小節線を越えると自動的に無効になるため、次の小節で同じ音を変化させたいときは、もう一度臨時記号を付ける必要があります。
調号が楽譜全体に影響するのに対し、臨時記号はその小節のその音だけに影響します。
休符
休符は、音を出さずに休む長さを示す記号です。音符と同じように、休符にもいくつかの種類があり、それぞれ対応する音符と同じ長さだけ休みます。
| 休符の種類 | 長さの目安 | 形の特徴 |
| 全休符 | 4拍 | 線の下に黒い四角がぶら下がった形 |
| 2分休符 | 2拍 | 線の上に黒い四角が乗った形 |
| 4分休符 | 1拍 | 縦に曲がったような形 |
| 8分休符 | 2分の1拍 | 旗が1つ付いた形 |
| 16分休符 | 4分の1拍 | 旗が2つ付いた形 |
全休符と2分休符は見た目が似ているため、混同しやすい記号のひとつです。全休符は線の下、2分休符は線の上に書かれると覚えておくと見分けやすくなります。
休符は単なる空白ではなく、音楽の流れを作る大切な要素です。休符の長さを正確に取ることで、フレーズの区切りや息継ぎが自然になります。
付点
付点は、音符や休符の右隣に付けられた小さな点のことです。付点が付くと、元の音符や休符の長さが1.5倍になります。
| 種類 | 長さの考え方 | 合計の長さ |
| 付点4分音符 | 4分音符+8分音符 | 1拍半 |
| 付点2分音符 | 2分音符+4分音符 | 3拍 |
付点音符はリズムに変化を付け、音楽をなめらかで表情豊かにする効果があります。
【強弱記号】基本となる音楽記号一覧③
強弱記号は、演奏のニュアンスを大きく左右する記号です。どのくらい強く、あるいは弱く弾くかを示し、曲に感情や表情を与えます。
基本の強弱記号
基本的な強弱記号は、イタリア語の頭文字を使って表されます。強弱記号は絶対的な音量ではなく、曲全体の流れに合わせた相対的な強さを示します。
| 記号 | 読み方 | 意味 |
| pp | ピアニッシモ | とても弱く |
| p | ピアノ | 弱く |
| mp | メゾピアノ | やや弱く |
| mf | メゾフォルテ | やや強く |
| f | フォルテ | 強く |
| ff | フォルティッシモ | とても強く |
また、一部の音を瞬間的に強調する記号もあります。
- sfz(スフォルツァンド):一部の音を急に強く演奏する記号
- アクセント記号:特定の音を目立たせて演奏する記号
強弱記号を弾き分けるときは、右手と左手のバランスにも注意が必要です。
だんだん強弱が変わる記号
強弱を段階的に変化させる記号には、次のようなものがあります。
| 記号 | 読み方 | 意味 |
| cresc. | クレッシェンド | だんだん強く |
| dim. | ディミヌエンド | だんだん弱く |
| decresc. | デクレッシェンド | だんだん弱く |
| < | クレッシェンド(松葉記号) | だんだん強く |
| > | デクレッシェンド(松葉記号) | だんだん弱く |
これらは、文字で書かれることもあれば「<」や「>」の形をした松葉記号で表されることもあります。だんだん強くしたり弱くしたりするときは、ただ音量を変えるだけでなく、フレーズの流れを意識すると、より自然な表現になります。
【速度記号】基本となる音楽記号一覧④
速度記号は、曲をどのくらいの速さで演奏するかを示す記号です。
数字で具体的なテンポを指定する方法と、イタリア語の言葉で速さのイメージを伝える方法があります。
直接指定する記号
イタリア語の速度標語は、クラシック音楽でよく使われ、曲の速さや雰囲気を示します。
| 速度標語 | 読み方 | 意味 | BPMの目安 |
| Andante | アンダンテ | 歩くような速さで | 63〜76程度 |
| Moderato | モデラート | 中くらいの速さで | 108〜120程度 |
| Allegro | アレグロ | 速く | 120〜152程度 |
BPMは、1分間に4分音符が何回入るかを表す目安です。ただし、速度標語は単に速さを示すだけでなく、曲の雰囲気やキャラクターを表す言葉でもあります。
曲中で指定する記号
曲の途中で速さを変える記号もあります。
- rit.(リタルダンド):だんだん遅く
- rall.(ラレンタンド):だんだん遅く
- accel.(アッチェレランド):だんだん速く
- a tempo(ア・テンポ):元の速さに戻る
そのため、rit. や accel. などでテンポが変わった後に a tempo が出てきたら、元の速さに戻して演奏します。速度を変える記号には、曲の表情を変えたり、クライマックスを印象的にしたりする効果があります。
【演奏方法の指示】基本となる音楽記号一覧⑤
音をどう響かせるか、どのように切るかを示すのが、アーティキュレーション記号や装飾記号です。
これらは細かい表現を指示する記号で、演奏のバリエーションを広げます。
アーティキュレーション記号
アーティキュレーション記号は、音の切り方や響かせ方を指示する記号です。代表的なものに、スタッカート、スラー、テヌートなどがあります。
| 記号名 | 意味 |
| スタッカート | 音を短く切って弾く |
| スラー | 異なる高さの音をなめらかにつなげて弾く |
| タイ | 同じ高さの音をつなげて、長く伸ばす |
| テヌート | 音を十分に伸ばして弾く |
スラーとタイは形が似ていますが、スラーは異なる高さの音をなめらかにつなげる記号、タイは同じ高さの音を足して長く伸ばす記号です。楽譜を読むときは、音の高さを確認して見分けましょう。
これらの記号を正しく読み取ることで、作曲家が意図した表現に近づくことができます。
装飾記号
装飾記号は、音にきらびやかな装飾を加える記号です。楽譜に華やかさや表情を加えるために使われます。
| 記号名 | 弾き方・意味 |
| トリル | 記号が付けられた音と、2度上の音を素早く交互に繰り返す |
| ターン | 記号が付けられた音を中心に、上下の音を回るように弾く |
| アルペジオ | 和音の構成音を下から1音ずつ、タイミングをずらして弾く |
装飾記号は、曲の時代や作曲家によって弾き方が変わることもあります。基本の意味を押さえたうえで、曲に合った弾き方を確認するとよいでしょう。
【反復記号】基本となる音楽記号一覧⑥
反復記号は、どこを繰り返すかを示す記号です。楽譜を効率的に書くために使われ、演奏の順序をコンパクトに指示します。
| 記号 | 読み方 | 意味 |
| リピート記号 | リピート | 記号で囲まれた部分を繰り返す |
| D.C. | ダ・カーポ | 曲の先頭に戻る |
| D.S. | ダル・セーニョ | セーニョ記号のところに戻る |
| Fine | フィーネ | そこで演奏を終える |
Fine(フィーネ)は反復した後に出てきた場合、そこで曲を終える指示です。
反復記号は複数の種類を組み合わせて使われることも多いため、演奏順序をしっかり確認してから弾き始めましょう。
【ペダル記号】基本となる音楽記号一覧⑦
ペダル記号は、ピアノ演奏で響きを豊かにするための記号です。とくに、ダンパーペダル(右ペダル)の使い方を示す記号がよく使われ、音をなめらかにつなげたり、演奏に深みを加えたりする役割があります。
楽譜では、ペダルを踏む位置と上げる位置が示されます。基本的には、音を弾いた直後にペダルを踏むことで、響きを自然につなげます。弾く前から踏んでしまうと、前の音まで残って響きが濁りやすくなるため注意が必要です。
ペダルを使うと、音と音がなめらかにつながり、響きに奥行きが生まれます。ただし、踏みっぱなしにすると和音が混ざってしまうため、和音が変わるところやフレーズの区切りで踏み替えることが大切です。
ペダルの効果は、楽器によっても感じ方が変わります。アコースティックピアノでは、弦の共鳴によって自然で豊かな響きが生まれ、ペダルを踏むことで音が美しく溶け合います。
一方、電子ピアノでは機種によって響き方に差があり、余韻の広がりや共鳴の感じ方がアコースティックピアノとは異なる場合があります。
ペダル記号を意識して演奏すると、楽譜に書かれた音だけでなく、響きの変化やフレーズの流れまで表現しやすくなります。
アコースティックピアノならではの豊かな響きを体験することで、ペダル記号の意味や作曲家が意図した表現も、より深く理解しやすくなるでしょう。
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【発想記号】基本となる音楽記号一覧⑧
発想記号は、楽曲全体の雰囲気や表情を示す記号です。演奏法というよりも、どんな気持ちや心づもりで弾くかを示すもので、クラシック音楽の楽譜でよく見かけます。
代表的な発想記号には、次のようなものがあります。
- dolce(ドルチェ):甘く、やわらかに
- con spirito(コン・スピリト):元気よく、生き生きと
- espressivo(エスプレッシーヴォ):表情豊かに
発想記号が楽譜に出てきたときは、その意味を確認し、作曲家がどんな演奏を望んでいるのか想像しながら弾くことが大切です。
こちらの記事では「クラシックの定番ピアノ12選」について解説しています。
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まとめ
音楽記号は、作曲家が理想とする演奏を伝える道しるべです。意味を理解すれば、楽譜に込められたメッセージを読み取りやすくなり、演奏がより表情豊かになります。強弱記号やペダル記号などは、実際の響きや余韻を感じながら練習することで理解が深まります。
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